その他Webに関すること

企業がインハウスWebデザイナーと雇う前に知っておくべき2つのこと

インハウスWebデザイナー

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近年、ホームページの営業的重要性が大きくなるにつれて、企業が自社でWebデザイナーを雇う、「インハウスWebデザイナー」が増えてきました。企業にとって外部にデザインを依頼するより安く済んだり、スピーディーな対応が可能だったり一見、メリットも多くあります。

しかし、一方でインハウスWebデザイナーを抱える企業の経営者、マネージャーから悩みを相談されることも多々あります。

企業が雇い入れる前に知っておくべき2つのこと。
・Webデザイナーのスキル
・インハウスWebデザイナーが抱える悩み

上記2点についてまとめました。

Webデザイナーのスキルについて

Webデザイナーと一言に言っても、それまで勤めてきた会社によってスキルが異なります。雇い入れる企業はまず、Webデザイナーのスキルを理解する必要があります。

Webデザイナーのスキルは大きく3つに分類されます。

・Webデザインスキル
・コーディングスキル
・ディレクションスキル

Webデザインスキル

Webデザインスキルとデザインスキルはイコールではありません。
紙を代表とするDTPデザインとWebデザインはスキル的に大きく違います

もし、企業側がWebに関するデザインスキルを求めているようであれば、DTPデザイナーでは入社後に「できること」についてギャップが生じてしまいます。逆に言うとWebデザイナーにチラシやポスターのデザインを任せるのは難しいと考えられます。

コーディングスキル

ここが最も勘違いされてしまっているポイントです。一番経営者から相談されることが多いポイントです。
コーディングとはhtml、CSSといったブログラム言語を用いてプラグラムを作成することです。

ここで重要なのは、コーディングができないWebデザイナーも多くいるということです。

多くのWeb制作会社ではデザインはデザイナーに、コーディングはコーダー(マークアップエンジニア)にとタスクが分けられています。

もちろんコーディングができるWebデザイナーもいます。

しかし、このスキルのギャップは入社後、お互いに苦しい関係になってしまうので、必ず採用面接時に確認が必要です。

どのように確認するのか?

企業側がどの程度のレベルが必要かわかっていれば、その基準を提示すればいいと思いますが、わかっていないケースが多いと思うので、簡単にニーズに対して確認すべき基準を以下に記載します。

●Webサイト(ECサイト)をゼロから制作したい場合
Q.実務レベルでゼロからの構築が可能かどうか?またWebデザインからコーディング(構築)までを全て手掛けたことがある案件は何件あるか?
A.「可能。10案件以上の経験がある」であればとりあえず問題ない

上記以下に関しては、ページ制作はデザインからコーディングまで全てお願いすることは可能か否か?更新レベルは?的な質問で問題ないです。

また、もし企業のWebサイトにCMSやカートシステムが入っているようであれば、そのシステムを使ったことがあるかどうかの確認も必要です。
代表的な確認システムは以下です。

CMS:
ワードプレス(WordPress)、ムーバブルタイプ(Movable type)、その他オリジナルもしくはマイナーCMS

カートシステム:
EC-CUBE、カラーミーショップ、Makeshop、ウェルカート、その他オリジナルもしくはマイナーカートシステム

システム側のカスタマイズもお願いするようであれば、かなり数は限られてしまいますので、確認必須です。

ディレクションスキル

ここも経営者から相談を受けるポイントです。

ディレクション業務とはクライアントからのニーズをヒアリングし、企画を提案。社内では制作スタッフをまとめ進行管理、品質管理を行うことを指します。
通常、ディレクションはWebディレクターが行いますが、中小規模のWeb制作会社ではディレクションを営業やWebデザイナーが兼任することがほとんどです。
このディレクションスキルがなければ、品質・進行管理がままならないことはもちろん「企画」経験がないので、WebデザイナーからのWebサイトに対する企画発信がないことは大いに有り得ます。

経営者とデザイナーとのギャップでよく聞くのは、「求める企業側は企画運営の提案をバンバン挙げて欲しいのに、デザイナーは言われたことしかやらない」というものです。

Webサイトの企画運営を任せたいという思いがあるようであれば、このディレクション経験があるかどうかは重要なポイントになります。

Webデザイナーのスキルについてのまとめ

インハウスWebデザイナーを初めて雇おうという場合、ある程度上記全てができる人材でなければ、なかなか実務で活躍できないのではないでしょうか?

実はこの上記3点がある程度できるレベルのWebデザイナーは、Web制作会社でも中々雇うことができない相当レベルの高い人材と言えます。

当然、引く手あまたですから、条件もそれに見合った条件を提示する必要があると考えられます。

インハウスWebデザイナーが抱える悩み

上記で中々レベルの高い人材でなければ、インハウスWebデザイナーとして活躍できないと記載しましたが、仮にレベルの高いWebデザイナーを雇うことができたとしても、その後のサポートも重要になります。

インハウスWebデザイナーの難しい点は3点

・コーディングのサポート
・スキルの維持
・マネージャー不在による不明瞭な評価

コーディングのサポート

上記で挙げた3つのスキルを要していたとしても、スキルの元々の専門はWebデザインであって、コーディングはサブ的要素になってくるかと思います。
インハウスWebデザイナーの場合、難しいのが元々専門でないコーディングで不明点にぶつかった場合です。
制作会社にいれば、相談するコーダーがいますが、企業内インハウスWebデザイナーは1人であることも多いでしょうから、誰にも相談できません。

企業側は非常にテクニカルな要件の場合は外注に出すことも視野に入れておくことも必要かと思います。

スキルの維持

Web業界は技術やトレンドの移り変わりが非常に早い業界です。

こちらもコーディングサポート同様、企業内に1人もしくは極少数で編成されたチームだからこその悩みですが、Web制作会社から出て行ってしまうと、新しい情報のキャッチアップが間に合わなくなってしまうことが多いようです。

自社で雇い入れた人材が業界で取り残されないように、企業は勉強会やセミナー参加等のサポートが必要です。

マネージャー不在による不明瞭な評価

これは知り合いのインハウスデザイナーからの愚痴だったりするんですが。。

そもそもデザイナーの評価はWeb制作会社でも難しいものです。
営業のように数字で評価しづらい上に、生産性に関しては「この人早いのか?遅いのか?」が分からない。品質についてはデザインの見た目でわかるかもしれませんが、コーディングの品質に関しては、コードが読めなければわからないでしょう。

とある企業の社長から「分からないからECサイトの売上にした」と聞いたことがあります。

これはデザイナーにとっては酷な話です。そもそもWebマーケティングまでやったことがあるWebデザイナーはそうそういませんし、しかも入社後に評価基準を設定したそうなので、Webデザイナーからしたら「ちょっと待ってくれ!」という叫び声が聞こえそう。。

ちなみに約2か月後にその社長とお会いした時にはそのインハウスWebデザイナーは辞めてました。

ここで重要なのは「インハウスデザイナーに求めない」ではなく、企業は求めるものを明確にし、デザイナーが心の中で「専門外だからできない」「専門外のことまでやらされてモチベーションが下がる」という現象を回避する必要があるということです。

採用の際にある程度、明確な評価基準を提示してあげて、Webデザイナーがその評価基準に納得して入社しているかどうか?が重要だということです。

デザイナーの評価は大変です。

生産性に寄ったら品質はおろそかになるし、品質に寄ったら生産性はおろそかになります。もちろんバランス良くが最も理想的です。
しかし「品質って誰基準だ?」っていう問題も生じます。

デザイナーは「感覚」人種ですが、「感覚」評価を嫌う人種であることも頭に入れておいた方が良いかと。

余談 ※デザイナーという人種の特徴

完全に余談ですが、デザイナーの特徴、テンションが下がるポイントを簡単にまとめました。それこそ人によりますが、こういう人が多いよーレベルでご確認ください。

・服装は自由じゃないとダメ
(服装は自由にしてあげないとテンション落とします。まずスーツに拒否反応があります)

・PCスペックはほどほどに良いモノを
(パソコンの能力が低いとあからさまに文句言います。あとMac派多いです)

・管理されるのを嫌う
(基本自由人なので、あからさまな管理を嫌います。でもコスト感覚に乏しいのである程度管理しないといつまでもやってます)

・数字を嫌う
(売上数字とか言うと拒否反応を示します)

・頑固
(デザイナーはある程度、頑固の方がいいです。その方が芯のあるデザインをするので。でも扱いにくいのは間違いないです)

・自分の仕事と他人の仕事をしっかり分ける
(自分のタスクであるか否かの線引きをはっきりしたい人が多いです)

・デザインの否定はやんわりとする
(デザイナーにとって「デザインを否定される=自身の人格否定」に近いものがあります。しかしチェックしないと「見てない」とも思われるので、ほどほどにやんわり言葉を選んで伝えてあげる必要があります)

ほんと主観ですが、ご参考までに。

まとめ

「企業がインハウスWebデザイナーと雇う前に知っておくべき2つのこと」を「Webデザイナーのスキル」「インハウスWebデザイナーが抱える悩み」の2つに分けてご紹介しました。私はデザイナーという人種とは10年以上付き合ってきていますが、未だに掴めない部分があるほどクセのある人種です。

コスト感覚やマーケティング寄りの成果からの逆算等々は、まず期待できないと考えるべきです。

インハウス化に関しては時代の流れですし、企業、制作者共に良い傾向だとは思いますが、なるべくギャップが生じないように企業側が歩みよってあげる必要があります。

ご参考までに。

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