20サイトのユーザビリティテストで検証するECサイトの導線設計について【プロセス編】

今回はサイト内の構造(導線設計)お話です。

20サイトのユーザビリティテストの実例を用いてユーザーの実際の動き、その動きの動機等をテスト後のヒアリング内容も含めて記載します。

ECサイトで購入させたい商品に辿りつかせるために最も重要な導線設計。

今回はトップページ流入からニーズにマッチした「ゴール商品」に辿り着かせるための「プロセス」をテストした結果です。

⚫︎プロセスとは・・
今回、定義するプロセスとはゴールの商品に辿り着くための行程を指します。
下図の赤線の部分です。

ECサイトのプロセスを説明するためのサイトマップ

今回はECサイトなので「商品」としましたが、企業によっては「サービスページ群」であったり、「Blog記事ページ群」だったりするかと思います。

では本題に。
今回は主に2つの軸で記載します。

  1. なぜECサイトの導線設計が重要なのか?
  2. ECサイトのプロセス改善を目的とした具体的施策
    施策内容のみを読みたい方はこちらから読み飛ばしてください。
今回のユーザビリティテストの条件設定です。都度説明するので見なくても本記事に大きな問題はありません。

今回のユーザビリティテストの条件設定
前提:
・本ユーザビリティテストはスマートフォンによるテストです。
・本ユーザビリティテストは初回訪問ユーザーを前提としています。※被験者はEC運営社ではなく弊社で用意
・今回はイージーなプロセスをテストするものではないので、トップページの「新着商品」や「おすすめ」「ピックアップ」等は非表示状態でテストをしています。
要するに下図のような導線は今回あり得ません。

ECサイトのトップページから商品詳細への導線を否定する説明をするサイトマップ

・2025年中に実施した20ものECサイトで行っているユーザビリティテストの合算結果なので、各ネットショップごとに導線、検索機能の精度は異なります。
・テストサイトのジャンルは「アパレル」「建材」「雑貨」「家具」と様々です。
※アパレルに関しては「既製品販売」もあれば「素材販売」も。家具に関しては「椅子専門」もあれば「家具全般」も。
・各ECサイトによって年齢性別等のペルソナは様々なので、被験者の属性も様々です。

なぜECサイトの導線設計が重要なのか?

ECサイトで提供する商品群の中で、初回訪問のユーザーにすでに認知されている商品はいくつあるでしょうか?超有名ブランド、超ハイブランドでない限りそんな商品をお持ちのECサイトは極少数かと思います。要するに購入してもらうには「ECサイトに訪問してもらうこと」と同等程度に「ECサイト内の有効的な回遊(ニーズにマッチした商品を見つけてもらう)」が重要になるということです。
今回は「初回訪問」を前提としています。今回のユーザビリティテストはDiorやVUITTONといった超有名ハイブランドではなく、商品点数が2、30点以上あるECサイトがメインの対象になります。

実際のユーザビリティテスト結果から現実を知る

ここでは20のECサイトで同様の定性的なデータを取得するユーザビリティテストを実施した際の結果を元に記載します。

では、まず定量的なデータのお話しから導入します。
ユーザーがトップページから流入した際に、1回のプロセス(戻る等をしないスムーズな導線)で目当てのページ(商品)に辿りつく確率は何%くらいだと思いますか?

結果はたった8.1%でした。

61の被験者サンプルから5件のみが迷うことなく目当てのページに辿り着いています。
残りの56件は初回のプロセスで目当てのページに辿りついていません。

辿り着かなかった90%超の内、約50%がお目当てと違う商品の「同階層の横移動」を開始し、1回もしくは数回のタップ(クリック)で目当てのページに辿りつく割合が約50%。
横移動をしなかった残りの50%程度は「戻る」を選択し、一覧ページに戻ってしまいます

弊社のユーザビリティテストでは「普段ならここで諦めて閉じる時、操作を停止して教えてください」という声掛けをするのですが、一覧ページに戻った約30%が数ページを閲覧した後、「諦めて閉じる」と申告しました。

目当てを事前に申告してもらっている状態、要するに「購入ニーズが最も高い状態」で20%弱が離脱するという結果になりました。
特に今回は直帰や外的要因は排除しているので、実際はもっと高い離脱率であると考えられます。

ちょっと脱線しますが、上記は一律に数値化しているので、少し年齢層で分けてみると、結果として優秀なプロセスを選択した被験者である「5件」については全て40代男女でした。

こちらとしては、デジタルネイティブと呼ばれるZ世代やα世代が優秀な動きをするのではないかと考えていましたが、全く違うネット創世記に中・高校生くらいだった40代が優秀な動きをしました。
そして「諦めて閉じる」という選択をしたほとんどがデジタルネイティブ世代でした。

今回は年齢層や性別にはフォーカスを当てないので話を戻します。

このことからECサイト運営者が思っている以上に、ニーズにマッチしている商品の閲覧は当たり前ではないということが挙げられます。
優秀な動きで初回プロセスで引き当てた8.1%のユーザーが全員購入すればコンバージョン率は担保されますが、予算オーバーだったり、他店との比較で負けたり、概ね良いがユーザーのこだわりのポイントがクリアできていなかったりと、「欲しいというニーズだけではクリアできないポイント」が存在するので、「辿り着いただけ」が8.1%なのです。
ゆえに、ECサイト運営者はECサイトへの流入だけでなく、ニーズにマッチした商品を閲覧させるための施策に頭を使う必要があります。

本テストの特徴として、優秀な5人の被験者は最初から絞り込み検索を行っていました。
※今回トップページの「新着商品」「ピックアップ商品」等は非表示にしています。
では商品一覧に戻ったユーザーも絞り込みをすれば良いと考えがちなのですが、商品一覧に戻ったユーザーの中でカテゴリなどで絞り込んだのは6割程度でした。

ここで言えることは絞り込み検索は有効的な手段だが、取りこぼしを防ぐ手段としては最適ではないということが言えます。

ちなみにテスト後、「なぜ、絞り込み検索をしなかったのか?」という問いに対しては概ね「気づかなかった」「なんとなく」「面倒だった」という回答でした。

筆者は40代男性なので、当然絞り込み検索を行います。コートが欲しいなら「コート」「アウター」といったカテゴリは最低でも絞ります。しかし、「気づかなかった」「なんとなく」「面倒」と答えたユーザーに深くヒアリングすると大きく3つに分類されました。

1、「似たような商品を見れば、どうせおすすめされる」というレコメンドを前提とした動き
2、絞り込み検索を過去にした時に失敗したことがある
ex)精度が悪く思ったように商品がアーカイブされない。検索結果商品が少なすぎる等
3、本当にきづかなかった

1のレコメンドについては以下にも記載しています。

レコメンドを前提とした動きをするユーザー

今やECサイトでレコメンド機能を有していないケースは稀です。しかし、そのレコメンドエリアに掲載する商品をユーザのニーズまでは考えていたとしても、商品探索の流れまで考えて設定しているECサイト運営者は少ないのではないでしょうか?

要するにECサイトの上層(トップページや商品一覧)で絞り込み検索をしないユーザーの一部は商品詳細の横移動を前提としているわけです。

ECサイトでレコメンド機能を前提とした商品詳細の横移動をするユーザーの説明図
赤線部分の商品詳細レコメンドを前提とした横移動

今回はテストの仕様はニーズを事前に明確にし、プロセス(ルート)の精度を明確にするものです。
訪れたユーザーは全員「今から○○を買うぞ!」という状態。それでも辿りつくことを諦めるユーザーがいます。
「なんとなくやってきた」「広告をなんとなく押した」といった、「今から買うぞ!ではないユーザー」の場合、ゴール商品に辿り着くユーザーの割合はもっと減るでしょう。

絞り込み検索使用の過去の失敗

上記で挙げたように絞り込み検索を使わなかったユーザーの一部は、精度が悪く思ったように商品がアーカイブされない。検索結果商品が少なすぎる等、「過去に絞り込み検索の使えなさを経験しているユーザー」です。

確かに商品点数の少ないECサイトではカテゴリーには1つしか商品がなかったり、キーワード検索ではヒットしなかったり、ユーザーのニーズにマッチしたカテゴリが用意できていない現実も存在します。

しかし、「検索結果の精度」については話は別です。

実はECサイトのリニューアルを行う際に現ECサイトの検索部分を調査すると、半数以上が「なんでこのカテゴリーは用意されてないんだ?」「なんでこのカテゴリー検索でこの商品Aはでないんだ?」という現象が起こります。
理由は大きく分けて2つです。

1、商品のカテゴリー登録が1つしかできない仕様のショッピングカートだから
2、単純な凡ミス、サボってる、気づかなかった

キーワードは仕方ないにせよ、商品を絞り込ませる作業はスムーズであるべきです。また、商品のカテゴリー登録が1つしかできなかったとしても代替案としてタグやグループ分けができるショッピングカードがほとんどです。ECサイト運営者は一度そのあたりについては検討してみてはいかがでしょうか。

今回は20のECサイトでのテストなので、ユーザーの動きには偏りが出てしまいます。
特に「特徴を絞った商品を扱うECサイト」では絞り込み検索を行われないケースが目立ちました。ソファーの専門店や特定の建材を扱う専門店です。前提自分に合う商品群だから大丈夫という安心感がある一方で、だからこそ見つけてもらえないというジレンマが発生しています。
専門性を高めたECサイトでも、カテゴリーはまだ明確になっていないユーザーのニーズを明確にしてあげる効果も期待できるカテゴリー設定は重要になります。※ソファーだったら2人掛け、3人掛けだったり、素材だったり。

ただ、過去のユーザーの失敗を「うちのサイトは大丈夫」とアピールすることは難しいです。
このユーザー層には結局はレコメンドエリアの精度の高さを向上させることが有益であると結論づけてよいでしょう。

ユーザーが検索機能に本当にきづかなかったわけ

実はこの検索機能に本当に気づかなかったと回答したユーザー層は特定のECサイトに偏っていました。

結論から言うと検索機能が「ハンバーガーメニュー内に格納されているECサイト」です。

PCに比べ、スマートフォンでの閲覧の場合、どうしても視野範囲が限られます。
よって、検索機能をハンバーガーメニュー内に格納したい気持ちも理解できます。しかし、ハンバーガーメニューの使用率は絶望的に低いものです。
ちょっと古いテスト結果ですが、以下にハンバーガーメニューに関する記事を記載します。

ここで提案したいのが、ボトムナビゲーションとの併用です。

スマートフォンのボトムナビゲーション説明図

スマートフォンサイトで見る下にくっついてくるアレです。
ハンバーガーメニューではどうしても「押すとメニューが出てくる」くらいしかわからず、中に有用な機能やコンテンツがあるとわかりづらいですが、省スペースで常に表示され、アイコン付きでわかりやすくアナウンスすることで、「気づかなかった」を解消することができます。

絞り込み検索をある程度積極的に使われたECサイトのほとんどが「コンテンツエリアに検索コンテンツがある」か、この追走型の「ボトムナビゲーション」がついているケースでした。

ECサイトのプロセス改善を目的とした具体的施策

最後に上記で詳しくお話しした現象とその対策を記載します。

現象

  • 初回訪問ユーザーは目的の商品に簡単には辿り着かない
     初回プロセスでは8.1%しか辿り付かない
  • ニーズありありの状態でも目的の商品に辿り着けないユーザーが20%もいる
  • レコメンドを前提とした動きをするユーザーも多い
  • 絞り込み検索は「なんとなく」「気づかず」使わないことも多い
  • 絞り込み検索自体を「面倒」「使えない機能」と断罪するケースもある

対策

  • レコメンドの設置は必須
  • レコメンドの掲載商品はユーザーニーズだけでなく、商品検索の道中であるというストーリー性も持たせる
  • 絞り込み検索のカテゴリーの設計ではユーザーの曖昧なニーズの明確化も考慮して検討する
  • 絞り込み検索のカテゴリーが仕様上難しい場合も、タグやグループなどの機能を使って、ユーザーのストレスフリー化を目指す
  • ハンバーガーメニューの使用率を考えて、安易にハンバーガーメニュー内にコンテンツを格納しない
  • ボトムナビゲーションを上手に使う

こういう記事を書くと、最後の結果は当たり前なことが並ぶのですが、この中でもできていないECサイトは結構多いと思います。

結果、ユーザーはゴールに辿り着きづらいから、導線には気をつけよう。
特にコンテンツエリア(レコメンド導線)の使い方は熟考が必要で、商品に辿り着きやすい絞り込みは見つけやすく使いやすい仕様が重要。特にハンバーガーメニューには気をつけて、ボトムナビゲーションをうまく使おう。って結果です。

今回の20のECサイトのユーザビリティテスト後、大小様々ですが、全てのECサイトが手直しを実施しました。
今回は定性的なユーザビリティテストを定量的にまとめて記載しましたが、本来ユーザビリティテストはきちっと実施すれば定性的な問題点を炙り出すには非常に有能です。

弊社ではユーザビリティテストを数多く実施しています。アクセス解析だけではわかりづらい今のサイトのUI/UXの問題点を改善し、ビジネス発展をお考えの方は一度ご相談ください。

のイメージ
株式会社SIBLAB 代表取締役
20年以上IT業界でホームページネットショップの制作、アクセス解析、Webマーケティングに従事。 特にアクセス解析、ユーザビリティテストについてはプロのWeb制作会社向けに講演した経験は多数。会社にも猫を連れ込むほど猫好き。 休日は猫と遊ぶか、ゲームするか、ぼーっとアクセス解析データを眺めて過ごしています。
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